いざ受験!となると、体験したことのない未知のこともいろいろ。ましてや日本の大学を国外から受けるとなると、不安なことも多いでしょう。実際に日本の大学に進学・留学した学生とその保護者の皆さん、また日本の大学を卒業し活躍する卒業生に、体験談を話してもらいました。
※あくまでも個人の感想です。
※入試制度などは当時のもので、現在は変更になっていることがあります。
体験談~学生~
英語授業の選択肢が多いのが魅力
日本に進学できて幸せです
Haley Tateyamaさん
上智大学・国際教養学部1年生
ハワイ生まれ、高校までハワイで育つ。2020年秋、上智大学に入学。
家族が日本人ということで、子どものころから日本にはなじみがあり、ずっと日本に行くことに興味がありました。上智大学を知ったのは、ライトハウス主催の大学フェアの時です。大学フェアには3回ぐらい参加して、上智大学の担当者の方とも話をして、ずっと一番行きたかった大学でした。上智大学の英語プログラムの入試は、学校の成績、SATスコア、推薦書などで評価され、アメリカのアドミッションと近かったので、それほど苦労することはありませんでした。
上智大学の国際教養学部では、2年次に専攻を選ぶので、1年次の今はいろいろな科目を取っています。特に私が興味のある文系の科目を英語で数多く受けられるのは魅力だと感じています。今まで受けた授業の中では美術史や倫理の授業が興味深かったです。今年の秋の専攻選択では、比較文化を選ぼうと考えています。
昨年の秋に入学したので、この半年は全てオンラインの授業でした。この春学期にはオンラインと対面のハイフレックスを導入予定と聞いているので楽しみです。授業以外では、音楽サークルでウクレレを弾いています。典型的なハワイ人という感じですね(笑)。ハワイではインストラクターのようなこともしていたのですが、人前に出たことはなく、去年のクリスマス時期にクリスマスライブで大勢の前で演奏した時はとても緊張しました。サークルの友人はほとんどが日本生まれ・育ちの子たちなので最初は不安もありましたが、みんな留学生を受け入れる気持ちを持っていて、すぐになじむことができました。
まだ1年次なので将来のことははっきり決めていませんが、日本がすごく好きなので、日本に残って働きたいと考えています。また、アートに興味があるので、コロナウイルスの流行が収まったら、大学の協定校の制度を利用して、ヨーロッパに留学したいです。
(2021年4月1日号掲載)
学業はもちろん、学外での活動もできるのが
日本の大学の魅力
奥村瀬七さん
青山学院大学・国際政治経済学部1年生
札幌市生まれ。生後すぐドイツに移り、4歳までドイツで過ごす。4歳~12歳まで札幌に住み、その後イギリスで2年、カナダで4年を過ごす。2020年春、青山学院大学入学。
高校はカナダのバンクーバーで通っていました。僕が高校を卒業する頃、家族は日本に戻ることになり、一人でカナダに残るか日本に移るかの選択になりました。バンクーバーはマルチカルチャーの街で、ヨーロッパと比べると住みやすい環境でしたが、最終的には日本に進学することを選びました。日本に長く住んだことがなかったので住んでみたいと思った、特に東京での生活が刺激的に感じられたというのが大きな理由です。経済を学べるということが大学選びの一番のポイントでしたが、その次に、「どこに住むか」ということに重きを置いて大学を選びたいと思ったんです。
受験科目は、小論文と面接がメインでした。大学の過去問で小論文の勉強をしたり、面接も過去に聞かれた内容を調べたりして対策をしました。僕は6月に高校を卒業して、次の年の4月の入学だったので、その間ほぼ1年ありました。この期間に何をして過ごすかというのは重要だと思います。小さな目標をこまめに立てて、有効に時間を使うといいと思います。
今は1年生なので基礎の科目が多いのですが、「開発経済学」という、途上国とのビジネスやサポート、支援についての科目が興味深いです。もともと自宅での学習は得意ではなかったんですが、この1年間オンライン授業を受けて、家で学ぶ習慣や、自制心みたいなものは付いたかなと感じています。
授業以外では、ホットソースを輸入してポップアップストアなどで販売するという仕事を毎週末手伝っています。売る場所によって客層も違うので、それに合わせた接客をするなどコミュニケーションの練習になっていると感じています。日本、特に東京の大学に通う魅力は、授業以外の活動でいろいろ刺激を得られることだと思うので、今年はもっといろいろなことに積極的に関わって、楽しみたいです。
小学生の頃から日本のお笑いを見て日本語に慣れ親しんだということもあって、日本のお笑いが好きなんです。日本のお笑いは他国にはない独特な文化だと感じていて、僕自身お笑いに救われたこともあり、将来は日本のお笑いに関わることをしたいと、今は考えています。
(2021年4月1日号掲載)
世界のダイナミズムを理解し、
さまざまな国で活動していきたい
Louis Angel Martinezさん
国際基督教大学(ICU)教養学部4年生(メジャー:グローバル研究)
カリフォルニア生まれ。10歳から2年間メキシコ、その後カリフォルニアで過ごし、2017年秋、ICUに入学。
日本のことを知ったのは高校3年生の時、姉妹都市の交換留学で、静岡県の磐田市にステイした時です。ホストファミリーなどから話を聞いて、日本の大学への進学に興味を持ちました。その中で一番魅力を感じたのがICUだったんです。600人ほどいた同級生のうち、国外の大学に行くのは3人程度。制度を調べたり出願書類を準備したり、特にビザ関係について調べるのは大変でした。
ICUでのメジャー(専修分野)はグローバル研究です。入学してすぐは言語学をメジャーにしようと思っていて、言語学の授業を多く取っていました。ICUの言語学の授業はとてもハイレベルだと聞いていたからです。その後、2年次終了時にメジャーを選択するにあたって今後深く学びたいのは何かと考えた結果、グローバル研究を専攻として選びました。グローバル研究はとても大きなテーマで、その中にもいろいろな学問が含まれているのが興味深く、学びがいのある内容だと思ったんです。卒業研究としては、「スペイン語が日本に与えている影響」をテーマにしました。ICUは先生と学生の距離も近いですし、本当にいろいろな学生がいるのでとても刺激的な環境です。
授業以外では、Spanish Speaking Society(SSS)という、約50年の歴史を持つサークルに入って、Vice Presidentも務めました。「Spanish Day」という3日間のイベントでスペイン語圏の文化を紹介したり、ICU祭(学祭)ではケサディーヤを売ったりと、いろいろな活動をしてきました。また、2020年の10月には、古酒を売るスタートアップの企業で1カ月間インターンシップをしました。商談なども担当させてもらって、ICUで学んだ日本語力をビジネスで試すいい機会にもなりましたし、自信も付きました。
卒業後は日本とアメリカ以外の国にも行ってみたいと思っています。その一方で、日本もすごく好きなので、日本語力の維持も含めて、日本で働きたい気持ちもあります。まずは長期のインターンシップなどで経験を積んで、10年後ぐらいには自分のビジネスを確立したいと考えています。そのためにもまずは世界のダイナミズムを理解することが大切かなと思っています。
(2021年4月1日号掲載)
国際ビジネスと日本語
2つの分野を勉強中です
Ian Takahashiさん
上智大学
国際教養学部 1年生
ハワイ生まれ、ハワイ育ちで、日本語を勉強し始めたのは高校1年生の時です。学校の授業で勉強し、その年に学校のプログラムで広島に2週間滞在しました。この2週間のホームステイを通して、日本が大好きになりました。
日本の大学の中でも上智大学を選んだのは、国際ビジネスと日本語の2つを同時に学びたい僕にとって、最適な大学だと考えたからです。上智大学は、いろいろな国からの学生が多く集まっていて、海外からの学生を受け入れる環境が整っていると感じます。現在は経済学などの基礎的な科目を勉強しています。日本語のクラスも取っていて、日本語力が基準に達すれば、日本語でのビジネスの授業を受けられるので、とても楽しみです。
大学を受験するにあたって、時間を見つけては日本語の勉強に励みました。勉強以外では、ビザの取得、アパートを借りて家具を用意することや、銀行口座を開くことに時間がかかりました。今は学校から徒歩15分ぐらいのところにあるアパートに住んでいます。まだそれほど多くの場所は訪れていないのですが、時々友人と新宿や渋谷に出かけます。東京は電車など交通の便がいいのと、とても大きな街ですが非常に安全だというのを感じます。また、ハワイに比べて、とても物価が安いことにも驚いています。
現在はまだ課外活動には参加していないのですが、春には多くのクラブやサークルが部員の募集をするので、ぜひ入りたいと思っています。テレビゲームのサークルがあると聞いているので、興味を持っています。日本の人たちは、知らない人とは話をしないことが多いので、クラブやサークルに入って友達を作るのがいいと思います。
入学して半年なので、卒業後のことははっきりとは決まっていませんが、国際的にビジネスを展開する企業や組織で働きたいと思っています。日本企業にも大きな自動車メーカーや電機メーカーがあるので、そういった会社のグローバルビジネス部門で働くのも魅力的だと思います。また、ビジネス系、法律系など複数の修士号の取得も考えていて、アメリカの大学院への進学も選択肢の一つです。
(2020年4月1日号掲載)
立命館大学に留学
異文化交流ができた半年間でした
Keanu Kimさん
California State University Long Beach 4年生
2019年、3年生の春から夏に半年間、立命館大学の国際関係学部に留学をしました。僕の通っているCalifornia State University Long Beach(CSULB)では、留学を必須としていて、提携している大学の中から立命館大学を選びました。日本に興味を持ったのはミドルスクールに通っている時で、マンガがきっかけでした。留学をする前から、日本には何度か行ったことがあり、留学をするならぜひ日本で、と考えていました。
留学中は、日本文化、日本地理、日本経済や異文化理解、基礎コミュニケーションの授業を取りました。日本の社会問題、特に高齢化社会に関連する事柄について多くのことを勉強しました。また、異文化理解、基礎コミュニケーションの授業では、日本の学生と交流する機会がたくさんあり、彼らがどういう考えを持っているのかを知ることができて、とても興味深かったです。「SUP!」という言語交流プログラムがあり、日本人学生とお互いに学ぶことができたので、とても良い制度だったと感じます。入学や入寮の時にサポートしてくれる制度も、たくさん用意されていたのを覚えています。
授業以外の面では、アウトドアのサークルに入り、ハイキングなどに参加できたのはとても楽しかったです。友達もそういった活動を通して作ることができました。立命館大学は駅からのアクセスがよく、京都市内は電車やバスも整備されていたので、いろいろな場所に行くことができました。車がないと行動が難しいアメリカとは、そこが大きな違いだと感じました。
日本とアメリカの大学で大きく違うと感じたのは、授業を受けるコマ数が違うことです。アメリカでは、多くて週5コマ程度ですが、日本では12コマぐらい受講している友達もいて驚きました。また、勉強以外に自由に使える時間も多くありました。大学3・4年生から就職活動をするのはとても面白い文化だと思いました。アメリカでは、学生の時は勉強に集中して、卒業してから仕事を探す、というのが一般的なので、そこもアメリカの違いを感じた点です。
今はCSULBに戻り4年生で、今年の秋に卒業する予定です。国際関係学を学んでいることを生かして、卒業後は「Peace Corps」のような、世界に展開するNGO団体などで働きたいと思っています。
(2020年4月1日号掲載)
矢野凛太朗さん
横浜生まれ。
10歳からポートランドで育つ。
15年4月、早稲田大学人間科学部人間環境学科に帰国生入試で入学。
高校時代にアメリカの大学の学費の高さに驚いて、日本の大学を受けることにしました。アメリカだと40歳になってもまだ教育ローンを払ってる人がいます。長い目で見て学費の差は大きいと思ったんです。
6月に高校を卒業して、7月に一人で日本に行き、祖母の家から代々木ゼミナールの帰国生コースの夏期講習に通学。秋に帰国生向けの入試を受けました。代ゼミはその前年にも短期の夏期講習に参加して、それ以来、担当者が定期的に帰国生受験に関する情報をメールで送ってくれていたんです。入試に数学のないところや、面接の比重の大きい大学など、数学が苦手な僕に合う大学を紹介してくれました。日本は、大学や学部によって受験科目や教科の比重が異なりますから、自分の強み弱みと、大学入試の情報のマッチングは重要です。
日本の受験で特にストレスを感じたことは書類ですね。大学は大使館で取った書類の封の仕方まで指示をします。それがアメリカの高校や政府機関にとっては面倒で、全然対応してくれないんです。さらに、日本から手配すると時差もあるし、アメリカの高校は夏休みになると電話なんて出ません。書類の国際配達にはお金もかかります。勉強より、書類の準備に苦労しました。
入学後、学業以外で熱心に取り組んだことは六本木のバーでのアルバイトです。アメリカの大学に進んだ友達に、僕ほどどっぷりバイトしている子はいないですが、バイト選びは将来を考える上で大切だと思います。バーの客層はグローバル企業で働く人たち。彼らを間近に見て「こういう社会人になりたい」というモチベーションになりました。たくさんの人と知り合い、さまざまな仕事や会社を知ることができた上、外資系企業は社員紹介制度のある企業が多く、お客様を通じて入社試験を受けるチャンスもありました。海外で働いてみたいし、シンガポールの会社も受けましたが、日本国籍の僕が新卒で海外での労働許可を得るのは難しいことから、日本の外資系を中心に就活。4月からはGoogleの日本法人で働く予定です。
(2019年4月1日号掲載)
留学を生かして日本で就職
小川朗歩さん◎国際基督教大学(ICU)
カリフォルニア州出身
日本語学習歴:小1~中3まで週末補習校。高校で日本語の授業を2年間受講する。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の交換留学制度で、国際基督教大学(ICU)に約10カ月間留学しました。両校とも3学期制で単位移行に無理がなかったことが決め手です。ICUでは2カ国語で日常を過ごすことができ、日本語力が向上しました。選択した授業の「宗教学概論」は大変興味深く、宗教を客観的な立場から観察でき、自分の宗教観が変わったほどです。また、「翻訳入門」ではマンガから実践的な翻訳スキルを学びました。ICUで多くの海外育ちの学生や留学生と交流できたのも有益でした。卒業後は日本の外資系企業に就職が決まっています。
(2017年4月1日号掲載)
国際交流スタッフとして活躍
尾崎瞳さん◎関西大学 環境都市工学部建築学科
滋賀県出身、13歳からアリゾナ州育ち
日本語学習歴:近くに日系教育機関がなく、進学に向け独学で日本語で勉強に励む。
在米中の高校3年の時、日本の大学進学を決め、実家に近いことから関西大学へ進学を決めました。関西大学は国際交流が盛んです。中でも留学生サポート団体「KUブリッジ」には多くの留学生が参加していて、私は国際部のスタッフとして関わることが多く、多国籍の学生と交流しています。将来は建築士の資格を取得し、アメリカで建築を学んでいる友人と一緒に仕事をしてみたいです。日本の大学を目指す人に伝えたいのは、やりたいこと、好きなことがあれば、いろいろ取り組んでほしいということ。一時帰国の際はぜひオープンキャンパスにも足を運んでください。
(2017年4月1日号掲載)
日本ならではの深い学びがある
鴨川絢美さん◎関西大学 環境都市工学部建築学科2年生
静岡県出身、8歳からノースカロライナ州育ち
日本語学習歴:小2~高1まで週末補習校。小学生時代は夏休みに日本の小学校へ通う。
日本とアメリカ、どちらで進学するか迷いました。しかし、建築を学ぶなら、天災の多い日本の方がより深く学べると考え、日本の大学に進学することを決めました。現在はほぼ100%日本語で講義を受けています。関西大学では1年生から建築について理論や製図を通して段階的に学びを深めることができます。共通教養科目で総合的な知識を身に付け、視野を広げることができるのも魅力です。今後は大学院に進学して専門を深めるか、就職するか迷っています。将来的には建築士の資格を取得し、英語力を生かしつつ、建築に関わる仕事をしたいと考えています。
(2017年4月1日号掲載)
アメリカを出て広がった視野
池田若葉さん◎立命館大学 国際関係学部国際関係学科2回生
ニュージャージー州出身
日本語学習歴:小2~4は日本の小学校。小5~高1まで週末補習校。小5~高1まで日系学習塾に通う。
日本で生活してみたかったので大学は日本への進学を希望し、中でも主に英語で学べる立命館大学を選びました。今は、英語7割、日本語3割の割合で授業を受けています。私の専攻では日英両方で多くの授業の選択肢がある上、他大学の教授の特別授業も受講できます。また、外国人留学生向けの多彩なプログラムがあり、それぞれに合った形で自分を試せます。アメリカから京都の大学という、全く違う環境に自ら進んだことで視野が広がりました。卒業後は大学で培った自分の日本人らしさを生かし、国際的な場で日本人として人の役に立てる仕事をしたいです。
(2017年4月1日号掲載)
体験談~保護者~
日本の大学に絞って受験
将来は外資系を考えています
北川 乃愛さん
国際基督教大学 教養学部 3年生
お話…母・道子さん(サンディエゴ在住)
娘が日本の大学進学を考え始めたのは、高校2年か3年の時だったと思います。高校までは平日は現地校、週末は補習校に通っていたのですが、現地校に通う中で、アメリカより日本の方が合っていると感じているようでした。なので、大学を探すに当たっては最初から日本の大学に絞って探しました。もともと、小学校1~6年生まで毎年、夏休みには日本の小学校に体験入学していましたので、日本にはある程度馴染みがありました。
入試は、「ユニヴァーサル・アドミッションズ」を受験。試験の内容はSAT、GPA、エッセーで、全て英語で完結する方式です。英語だけで受験ができることがポイントでした。他大学も、同様の方式で何校か受験しましたが、ICUは比較的人数も少なくアットホームな雰囲気だったので、学校見学の時から印象に残っていたようです。親としては、4年間ずっと大学の寮に住めるので安心、というところも大きかったですね。
9月入学したのですが、周りのお友達も同様の方式で入学した、海外生活が長い子が多く、仲良くなりやすかったようです。入学後1年間は日本語の授業もみっちり受け、漢字なども身に付けられたことは、本人も喜んでいました。一方、学年が上がると4月入学の子たちとも一緒になり、最初は感覚が合わないところもあって大変なところはあったようです。もともとアメリカでもダンスをしていたこともあって、ダンスサークルに入っています。ここでも最初は「自主練」など日本のやり方に戸惑ったところはあるようですが、今では朝早くから夜遅くまで楽しく練習しているようです。
保護者として神経を使ったのは書類や手続き。推薦書が2通必要だったので、現地校、補習校それぞれにお願いしたり、書類の提出は郵送で日本に送らなければいけないので、確実に届くようFedExを使ったり。万が一届かなかったらどうしようという心配はありましたね。幸い私たちは大丈夫でしたが、実際、日本に期限までに届かず、受験できなかったという知り合いもいました。こういったところは子ども任せにせず、保護者がしっかりフォローする必要があると思います。
就職については、今のところは日本国内での就職を考えています。その中でも、日本国外でも働くチャンスのある外資系企業がいいかなと話しています。今後、アメリカで開催されるキャリアフォーラムにも参加し、就職活動を進めていこうと考えています。
(2020年4月1日号掲載)
大好きな日本に移住し興味の
ある経済学に打ち込んでいます
Iさん
慶應義塾大学 経済学部 1年生
お話…お母様(日本、関西地方在住)
息子はアメリカ生まれで、大学入学で日本に引っ越すまでアメリカで暮らしていました。現地校と、週末には補習校に通い、ほぼ毎年夏には日本に行き、小・中・高校まで日本の学校に体験入学をしていました。高校生のころからは日本の小説を読むようになり、とにかく日本が大好き。その影響もあって、アメリカ育ちの子どもとしては日本語力も高い方だと思います。
大学受験に際して、私たち両親としてはアメリカの大学も良いのではと思い、1校だけ受けたのですが、本人は初めから日本という気持ちが強かったですね。慶應義塾大学の「PEARL」入試は、アメリカの大学を受けるのと同様、SAT/ACT、学校からの推薦書、エッセー、加えてTOEFLの点数の提出をして受験しました。
SAT、TOEFLなどは、もっと早くから受けて準備を始めれば良かったなと思っています。書類が届くのに時間がかかるためです。学校に依頼する成績書類や推薦書も、早め早めに準備をすると良いと思います。息子は音楽をやっているのですが、エッセーや書類の提出時期がコンサートと重なり、私の方でいろいろな手続きなどを進めました。書類集めや郵送など、とても大変でしたね。
オンラインで書類を提出する際、お金を払って受付が完了したと思ったのですが、実際には最後の送信ボタンを押しておらず、1期の試験が受けられないというミスがありました。結果的には2期で受験し合格しましたが、募集人数の多い1期を受けられなかったのは本当に痛かったです。受験のガイドなど、細かく見ていくのは非常に大切だと実感しました。
慶應義塾大学の他に合格した大学も、入学金の支払いまでは進めました。日本に帰国して、実際に目で見て決めたいと考えたためです。ほとんど慶應義塾大学に気持ちは決まってはいたのですが、実際に現地で見て、本人が納得して決められたのでいい選択だったと思います。
昨年の秋に入学して、本人はとても楽しくやっているようです。もともと経済に関する勉強をしたいという希望だったので、入学してすぐに、経済の専門的なことを勉強できているので満足している様子です。アメリカ育ちなので満員電車での通学、乗り換えなどは大変ということはありますが、周りの友人も、インターナショナルスクールや日本国外で育った子が多いのも良い環境で、とても充実した日々を過ごしているようです。
(2020年4月1日号掲載)
アメリカの大学を中退して日本の大学に進学
Tさん LA在住 ※ご本人の希望で匿名にしています。
<息子さんプロフィール>
ハワイ生まれ、10歳からLA育ち
家庭内言語:日本語
日本語学習歴:家庭内のみ
上智大学国際教養学部に在学中
息子はアメリカの4年制大学を2年で辞め、上智大学に入りました。高校時代はアメリカの大学しか興味なかったのですが、友人が日本の大学に短期留学したことから、興味を持ったそうです。編入もできましたが、友人の話を聞いたり、調べたりする中で、できれば長く滞在したいと思うようになり、外国人留学生の枠で1年生から入りました。
上智にしたのは、知人を介して、アメリカから上智に進学した人を紹介していただいたからです。さまざまな国から留学生が来て、多様な文化を共有できそうなことが受験の決め手でした。
当時の息子は日本人の顔をして日本語を話すのに、日本に住んだことはなく、日本人の考え方や文化もよく知りません。それを知るなら、若い方がいいだろうと進学を前に親子で話しました。アメリカの大学は復学がわりと簡単です。もし合わなければアメリカに戻ればいいと、中退を決めました。入試や書類の手配は、ほぼ本人にお任せ。家探しは私の日本にいる友人に頼みました。
息子は留学を経て大人になったと思います。お互い親離れ、子離れできる良い機会でした。授業以外は日本語で生活するので、高いレベルの日本語を習得し、文化や礼儀作法も学べました。日本人独特の感覚や空気感は現地で生活しないと分からないですよね。それに親のルーツや、自分が日本人の血を受け継いでいること、アイデンティティーについて考えるようになったように思います。ちょっと日本人っぽくなったかな(笑)。
彼は今秋卒業予定で、この後はアメリカの大学院進学を考えています。日本の大学に行ったおかげで、その先の仕事に関しても、日米どちらも選択できるようしたいと思うようになったようです。息子の将来の選択肢が増え、日本に行かせて良かったと思っています。
(2019年4月1日号掲載)
記念受験が一転まさかの日本進学で戸惑いの連続
シュミット直子さん サンディエゴ在住
<息子さんプロフィール>
デンバー生まれ、シアトル・ノースカリフォルニア・サンディエゴ育ち
家庭内言語:ほぼ英語
日本語学習歴:高校の第二外国語で日本語を選択
早稲田大学国際政治経済学部を18年秋に卒業
息子は補習校のような日本関係の学校に通ったことはありません。ですが、高校の授業で日本語を取るとのめり込んで日本語で話すようになり、発音も美しく、漢字もかなり上達しました。大学進学はアメリカしか考えていませんでしたが、日本語クラスの先生から筑波を紹介されたことを機に、早稲田を半ば記念のつもりで受験。第一志望のアメリカの大学に落ち、他の合格した大学と比較検討して早稲田に決めました。彼の高校時代の得意科目は日本語。早稲田なら日本語の勉強もでき、母親の国のことも分かるからと決断したみたいです。正直、夫は自分の近くでアメリカ人らしくアメリカの大学生活をしてほしかったようで、私も今まで貯めた進学資金が税金やペナルティーの関係で日本留学の費用に使えないため学費の工面が大変で、経済的な理由から気乗りはしませんでしたが、最終的には彼を尊重して日本に送り出しました。
入学前、日本の親に寮の下見をお願いしました。また、私は日本に銀行口座も住民票もないので、日本で新規の銀行口座を開設できず、母に新たに口座を開いてもらい、学費などの送金に使いました。入学当時の息子は未成年で何をするにも保護者の同意が必要な上、私自身もアメリカが長くて分からないことも多く、携帯電話の申し込み、住民票の取得、健康保険の手続きなども苦労しました。
息子からは、秋入学は春入学より入学式が簡素だとか、満員電車での通学が大変だったと聞いています。部活では、先輩に立ち止まってお辞儀をするとか、敬語を使うといった上下関係に戸惑うこともあったそうです。お年寄りから「アメリカ人は出ていけ」などと言われてショックを受けたことも…。良くも悪くも日本がよく分かったでしょう。若いうちしかできないことはたくさんあります。日本の暮らしは良い経験になったと思っています。
(2019年4月1日号掲載)
帰国生で入学し本物のバイリンガルに成長
鎌田恵さん LA在住
<息子さんプロフィール>
イギリス生まれ、日本・オーストラリア・LA育ち
家庭内言語:親子は日本語、兄弟は英語
日本語学習歴:オーストラリアは日本人学校(小4まで)、LAは補習校(中学まで)、日系の塾(高校)
上智大学国際教養学部に在学中
我が家は長い駐在期間ではあるものの、いずれ日本に帰国する予定なので、最初から日本の大学しか考えていませんでした。長男は11年生の夏の一時帰国の際に、東京の大学に通う知り合いにお願いして講義に特別に参加させてもらい、日本の大学に行きたいと思ったみたいです。
9月入学で、英語で講義が受けられる大学を志望しましたが、当時はそのようなプログラムのある学校が少なく、情報収集は苦労しました。我が家では一つ一つ学校のウェブサイトを調べたり、同じ高校から日本の大学に進学した先輩に話を聞いたりしました。書類選考だけで受けられる7、8校を受験。最終的に上智にしたのは、英語プログラムの歴史が長く、昔から多くの帰国生や留学生を受け入れてきたので、海外生活の長い長男に馴染むと考えたからです。本人は都会が好きなので、四谷という立地も気に入ったみたいですけど(笑)。
今、彼は大学寮で生活しています。世界中から来た学生と友達になれるのはもちろんのこと、日本の地方出身の学生もいて、彼らからも大いに刺激を受けているようです。長男は「日本で暮らすことで、今までアメリカで生活してきたことが大きなアドバンテージだと実感している。日本文化とアメリカ文化両方を知る真のバイリンガルになれそう」だと言っています。
長男の受験を通じて、なんとなくの雰囲気だけでなく、「なぜ日本の大学なのか?」と本人に明確な理由や目標を持たせてあげることが重要だと感じました。2年後、次男も日本の大学進学を考えていますが、次男は長男より日本を知らずに育っているので、日本の大学でうまくやっていけるか心配です。ただ、長男のときと比べ、英語で授業を受けられる日本の大学が増え、選択肢が増えているという実感はあります。
(2019年4月1日号掲載)
アメリカの大学志望から一転日本の大学生活をエンジョイ中
Sさん 某州在住 ※ご本人の希望で匿名にしています。
<息子さんプロフィール>
アメリカ生まれ、アメリカ育ち
家庭内言語:日本語
日本語学習歴:小中で補習校
慶應義塾大学経済学部英語プログラム(PEARL)に在学中
息子の希望でアメリカの大学をメインで受けつつ、日本の大学も選択肢に入れました。11年生の年末年始、親子で都内の大学3校の構内を歩いたり、学食を食べたりしたことが影響したようです。
日本の受験で得にくかった情報は合否のボーダーです。一部の学校だけがACTなら何点などと公表しています。私は主に帰国子女専門の塾のウェブサイトなどで情報収集をして、息子は志望校に留学中の英語圏の学生たちとSNSを通じてGPAやSATのスコアを聞いていたようです。
最終的には書類出願で受けられる東大PEAK(教養学部英語コース)と、慶應PEARL(経済学部英語プログラム)を受験。東大PEAKは学校側が世界中で書類通過者に面接をしていて、アメリカでは4地域で開催されました。息子曰く、面接というより理科、社会、数学、英語の口頭試験のようで、かなり厳しいものだったそうです。
1月にアーリーアドミッション(早期締切)でアメリカの志望校に落ち、3月に慶應に合格しました。日本の大学はスケジュール的に併願し易いのですが、入学金の納期が早いのです。他大学の結果はまだでしたが、入金しないと入学資格がなくなるため、慶應に行くか迷っていた段階で入金しました。アメリカの上位志望校が駄目だった時点で、本人はかなりショックだったようですが、息子のやりたいこと、行きたい所など、家族で話し合い、最終的に慶應を選択して進むことになりました。
彼は今、学生生活を満喫しています。ビジネス系のサークル活動に夢中で、サークルとOB会の三田会を通じ、さまざまな分野で活躍するOBと交流できることが楽しいようです。このままだと日本で就職しそうですね。予想以上にいろいろなことにチャレンジできる機会があり、結果的に日本の大学でベストだったと言っています。
(2019年4月1日号掲載)
日本で生まれアメリカ育ちの娘が日本の大学に進学
取材協力:T.S.さん
LA在住。仕事の都合で2007年に家族で渡米。家族は日本人の妻、日本生まれの娘が2人。長女は渡米当時小学2年で、高校まで現地校へ通い、2017年9月に都内の大学に入学。
日本の大学にした理由の1つは学費です。また、長女自身に「絶対にこの分野を極めたい」というものがなかったことから、リベラルアーツ教育のある大学を探しました。彼女は日本での社会経験がほぼゼロなので、日本人と生活し、日本社会を学べる点も日本の大学に行く利点として大きいと思います。
10年生の頃、一時帰国の際に2校の大学を見学しました。当時はとりあえず見ておこうという軽い気持ちです。日本の大学に絞ったのは、11年生の前半でした。
日本の大学の受験を決めてから、日系の塾に通わせました。塾ってあれこれクラスを取ると、金額もかさみます。娘とクラスの絞り込みについては話し合い、お金のありがたみや重要性は意識させましたね。塾代も負担でしたが、塾の送り迎えも大変でした。
現在、彼女の通う学部は全部英語で授業が受けられます。長女は小中で補習校に通ったものの日本語に自信がなく、これは学校選びの決め手になりました。9月入学で高校卒業からタイムラグがない上、アメリカにいたまま受験できたのも良かったです。他の大学と比べ結果が出るのが早く、ここが決まったので、他は受けませんでした。
情報収集としては、塾の先生や、同じ高校の同じ境遇の先輩の話を聞きました。事実は1つでも、それを受け止める感覚は人それぞれ違うので、情報を得ても、判断は難しかったです。正直、口コミよりも大学側からの帰国生向けの情報がもっとほしかったですね。帰国生や新二世向けの情報は限られていて、その限られたソースの中で限られた決定しかできなかったような気がしています。
長女は今、大学の近くの学生会館に住んでいます。口コミやネットのキーワード検索を頼りに学生会館を探し、国際電話やメールをしました。住まいに関する情報も少なく、情報集めには苦労しました。大学が決まるのが1、2月。入居は9月。その間、ブランクがあるから、すぐには探せないし、寮だって空きが出る1、2カ月前にならないと分からないわけです。6~7月に探して、8月半ばに荷物を入れ、9月に住み始めました。
引っ越しは家族総出です。スーツケースに服などを入れられるだけ入れ、皆で飛行機で持って行きました。埼玉にある妻の実家を拠点にして買い物をし、ちょっとした棚などは私が車を借りてきて準備しました。引っ越しは大学の近くに拠点がないとけっこう大変だと思います。
アメリカの大学にせよ、日本の大学にせよ、将来の目標や、日本(アメリカ)で何をしたいか親子である程度擦り合わせをすることが大切です。日本の大学になじんで学生生活を謳歌している子もいれば、なじめなくて戻って来てしまう子もいますし、アメリカの大学でもドロップして家に戻ってきてしまう子もいます。受験の前に親子で話し合い、お互いが納得して進路を決めた方が、最終的に良い結果になるのではないでしょうか。我が家もまだ次女がいるので、家族でこれからを考えているところです。
(2018年4月1日号掲載)
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版2020年4月1日号」「ライトハウス・ロサンゼルス版2019年4月1日号」「ライトハウス・ロサンゼルス版2018年4月1日号」および「ライトハウス・ロサンゼルス版2017年4月1日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。