日本の大学受験Q&A

子どもの大学進学は家庭の一大事。進学、留学先に日本の大学を選択肢に入れたとき、何から始めればいいのでしょうか?そして日本で学ぶ意義やメリットとは?近年のグローバル化で積極的に留学生や帰国生の受け入れが進む日本の大学の現状を、体験者やプロの声を交えながらご案内します。

日本の大学受験 Q&A

日本の大学の特徴はどんなところでしょうか?
日本の大学は、高等学校を卒業すれば受験資格が得られること、卒業まで一般的に4年かかることなどは、アメリカの大学と同様です。また、学部や学科などを決めて受験するという点は、ヨーロッパやアジアなど世界の多くの国の大学と共通です。
アメリカの大学の特徴は、入学審査が大学全体で一本化されていることです。学生は、学部や学科に合格するのではなく、大学に合格するので、入学後に学部や学科を変更したり、学部や学科を決めずに進学することが可能です。これに対して、日本を含む世界中のほとんどの大学では、学部ごとに入学審査が行われるため、大学進学後に学部を変更することは難しいです。(教育コンサルタント原田誠さん)
実際、日本の学費ってどれくらい安いの?
日本の大学の年間授業料(初年度のみ、入学金を含む)は国公立大学と私立大学で異なり、国立大学は約82万円、公立大学は80万~100万円程度、私立大学は120万~170万円程度(医歯学では500~700万円程度)(※1)となっています。
月々の生活費(住宅費、食費、交通費など)は、下宿生平均で12万9090円(※2)。寮に住めば住居費は抑えられますし、都市部でアパートなどを借りる場合はさらに高くなることもあります。親元を離れ一人で生活する場合、学費以外にも費用がかかることも頭に入れておく必要があるでしょう。
一方アメリカでは、授業料と諸経費の合計は、州立4年制大学の州内生は1万440ドル、州外生が2万6820ドル、私立大学は3万6880ドルとなっています(※3)。(編集部)
※1:旺文社教育情報センターデータより。 ※2:独立行政法人日本学生支援機構 「55回学生生活実態調査の概要報告」データより。 ※3:「College Board」データより。
日本の大学に向いているのはどんな学生でしょう?
一般的には、将来の目標がはっきりしていて、大学で学びたいことが明確に決まっている学生は、日本やヨーロッパの大学が適しています。一方、大学でいろいろ学びながら将来の方向性を見つけたい学生や、複数の分野を同時に学びたい学生は、アメリカの大学が適しています。
とはいえ、単に日本の大学が向いているのか、アメリカの大学が向いているのかという議論ではなく、個々の大学の教育システムをしっかりチェックすることが重要です。アメリカの大学が、それぞれ特徴がはっきりしているように、日本の大学でも、独自の取り組みをするユニークな大学が増えてきました。自分の学習スタイルにぴったり合う大学が、たまたま日本の大学かもしれないし、アメリカの大学かもしれません。
また、学生の中には、忙しい高校生活で燃え尽きてしまって、大学進学時に学習意欲が十分ではない学生がいます。そのような学生にとって、授業時間外にも多くの自主学習が必要な、アメリカの大学への進学はリスクが高いので、日本の大学の方が適しているかもしれません。(教育コンサルタント原田誠さん)
日本語に自信がなくても大丈夫?
大学で必要な日本語力は、プログラムにより大きく異なります。入試で日本語力を問わない大学や、日本語力がゼロでも進学できるプログラムも徐々に増えてきていますが、専攻が限られます。ある程度の日本語力があった方が、プログラムの選択の幅は広がるでしょう。
また、日本語で小論文を課す大学は、過去問題を見ることで、どれくらいの日本語力を要するのか、ある程度推測ができます。(教育コンサルタント原田誠さん)
日本でも英語の講義が増えているってホント?
グローバル化に伴い、日本では英語で受けられる講義や、学位の取れるプログラムが増えつつあります。特に工学系(学部17、大学院265)、総合学際部系(学部16、大学院65)、人文科学系(学部12、大学院15)、社会科学系(学部11、大学院15)といった分野で英語の学位を取得できるコースが多いです。ちなみに、全授業に占める「全て英語で行われる授業(語学除く)」の割合が高い大学は、1位・国際教養大学(秋田県)、2位・立命館アジア太平洋大学(大分県)、3位・宮崎国際大学(宮崎県)となっています。(文部科学省高等教育局学生・留学生課)
(※日本学生支援機構調べ 2017年5月時点)
アメリカの大学と併願できる?
日本でもSATやACTのスコアや英語の推薦書など、アメリカの大学と同じ提出物で出願できる大学が増えてきています。また、複数回の受験機会を設けている日本の大学がほとんどです。一般的な帰国生や留学生向けの試験は、秋入学だと12年生の12~5月、春入学だと高校卒業後~翌春に実施。つまり、12年生の1~3月にアメリカの大学の結果が出た後も、日本の大学を受けるチャンスがあります。ただし、日本の大学に入学する権利を保持するには入学金の納付が必須。入学金の納入期限の確認をお忘れなく。(編集部)
大学卒業後の進路はどんなものがあるでしょうか?
日本の大学を卒業した後の進路については、就職をする場合と大学院に進学する場合が多いです。
日本には新卒採用制度があり、この制度は世界中のどの大学に進学しても利用できます。したがって、日本の一般的な企業に就職を希望する場合は、日本の大学生と海外の大学生で違いはありません。ただし、卒業後に日本以外の地域で就職を希望する場合は、その地域の大学に進学した方が就職活動はしやすくなります。
大学院に進学する場合は、大学での成績や活動が評価されます。日本の大学に進学した後に、日本以外の国の大学院に進学する場合でも、特に不利になることはありません。(教育コンサルタント原田誠さん)
日本の大学新卒者の就職状況は?
2019年3月卒業生の就職率(就職者÷就職希望者数)は97.6%と、ここ5年ほど高い数値で安定しています。日本の就職はアメリカと異なり、新卒者を一括で採用する方式がまだまだ多いので、仕事の経験がない新卒者でも比較的就職しやすい(有名で待遇の良い企業にも新卒で入社できる)という特徴があります。大学卒業後、日本で長く働きたいという人はもちろん、その後のキャリアアップを見据えても、最初に日本の企業に就職するというのは、良い選択肢の一つでしょう。(編集部)
※文部科学省データ
日本の大学が気になったら、まず何から調べればいいの?
以下のサイトでは日本の大学の情報をまとめて見ることができます(いずれも英語版あり)。(編集部)
■JapanStudySupport jpss.jp
外国人留学生のための日本留学のポータルサイト。
■(独)日本学生支援機構 www.jasso.go.jp
「日本留学学校情報」では、英語で学位の取れる大学、外国人の編入を受け入れる大学、奨学金などを紹介。
■スーパーグローバル大学創成支援事業 tgu.mext.go.jp

文部科学省の担当者に聞く!日本への大学留学の現状

日本の留学生はどれくらい増えているのですか?
(独)日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査によると、2018(平成30)年5月1日現在の外国人留学生数は29万8980人(対前年比3万1938人・12.0%増)でした。
留学生数の多い国・地域は中国11万4950人、ベトナム7万2354人、ネパール2万4331人の順で、アメリカからの留学生数は2932人(対前年比146人増)となっています。
日本に来る留学生はどういった分野で学ぶ人が多いのでしょうか?
(独)日本学生支援機構の調査によると、日本の高等教育機関(大学、短期大学、高等専門学校および専門学校)で学ぶ外国人留学生の専攻分野別の内訳は多い順に社会科学、人文科学、工学、芸術、家政、保健、農学、理学、教育、その他となっています。
また、同機構の別の調査によると、私費外国人留学生が日本に留学する目的は、1位・学位を取得、(53.2%)、2位・就職に必要な技能や知識を身に付ける(47.3%)、3位・日本で働く、もしくは日本企業に就職する(44.3%)、4位・国際的な経験を積んで、国際的な人脈を作りたい(31.8%)、5位・国際的な考え方を身に付けたい(31.0%)と続いています。
日本の留学生向けの奨学金や援助にはどのようなものがありますか?
日本の大学の経済援助には、奨学金と授業料の免除(30%、50%、100%など内容は大学により異なる)があります。日本の奨学金は、留学に必要な全費用を支給するものは少なく、多くは生活費や授業料の一部に充てるためのものです。日本に来る前に日本国外から応募できる奨学金(渡日前応募)は非常に少なく、大多数は日本に来て学校に入学した後、日本国内で応募するものになっています。

取材協力: 文部科学省 高等教育局 学生・留学生課

※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版2020年4月1日号」「ライトハウス・ロサンゼルス版2019年4月1日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。