日本の大学最新情報

日本の大学入試のプロに聞く
日本の大学の今の姿 2020

現在の日本の大学を取り巻くリアルタイムな情報について、日本で大学情報を取り扱う旺文社の教育情報センター・マネジャーの加納さんにお話を伺いました。

加納冬樹さん加納冬樹さん
旺文社・教育情報センター マネジャー。
螢雪時代臨時増刊編集長、螢雪時代統括編集長を経て現職。全国の大学情報・入試情報の収集、分析を通して編集・執筆を行う。
旺文社 教育情報センター:高校の先生、大学の教職員など全ての教育関係者に向けて、教育情報、入試情報等を発信しています。
Web:eic.obunsha.co.jp

今、人気のある大学や学問分野に特徴はありますか?

日本の大学入試では、受験生の志望動向には社会情勢が反映されるケースがよく見られます。例えば、大学生の就職難が問題になったりすると、資格が取れる学部・学科(医療系など)の人気が高まります。景気の好転が見られると、経済・経営・商学系統に志願者が集まります。このような、時の情勢とは関係なく、近年人気が高いのが、理・工学系統です。

理系は一般的に就職に強いとも言われており、そうした理由もあるでしょうが、近年のロボット、AI、データサイエンスといった社会の変革を表すトピックスを学べる学問分野は、受験生の人気を集めています。

人気のある大学は、一口には言えませんが、やはり、発信力のある大学―入試制度だけではなく、研究成果や学べる学問を分かりやすく発信する大学─は、受験生からの人気を集めています。気になる大学のウェブサイトなどを見ることをお勧めします。

近年新設されている学部・学科の分野に特徴はありますか?

近年最も多く新設されている学部・学科は、看護・医療系統です。この流れは、10年以上も前から続く傾向です。社会の高齢化、医療の高度化などによるニーズを反映していると考えられます。一方、ここ数年の新設学部・学科で目に付くワードは、「国際」「地域」「心理」「情報」「データ」「スポーツ科学」などです。社会のグローバル化、地域振興、成熟社会、高度情報化社会、オリンピック・パラリンピックといった時代背景を、大学の新設学部・学科から見て取ることができます。

大学入試はこれまで、そしてこれから、どう変わっていくのでしょう?

文部科学省では、学力の3要素として「知識・技能」「思考力・表現力・判断力」「主体性・多様性・協働性」を示しています。これら3要素からなる「確かな学力」育成のために、高校教育、大学教育、大学入試を一体的に改革することが検討されました。入試に関しては、従来の日本の大学入試では知識量のみを問うているという指摘もあり、知識に加えて、課題解決に必要な思考力・表現力・判断力、主体的に学ぼうとする態度なども評価されることとなりました。

2020年を最後に大学入試センター試験が廃止され、21年からは大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が新しく導入されます。共通テストでは、知識を問う問題だけでなく、知識を活用して解く思考力系の問題が全教科で出題されます。初見の資料から必要なデータや情報を抽出・収集し、分析・整理する力が問われたりします。例えば生物で1500m走での体内のエネルギー物質のグラフが示され、「スタート10秒後・30秒後・45秒後…、この人の体内で何が起きているか」といった問題です。

このような入試問題の変化は、共通テストだけに限らず、各大学の個別試験の出題傾向にも影響を与えるものと考えられますので、21年入試での出題内容は要注視ポイントです。

また、英語4技能の評価が、大学入試で高まる傾向にあります。民間の英語検定試験(英検、TOEFL、IELTSなど)を受験すると各大学に試験の成績が送られる、「大学入試英語成績提供システム」の導入は延期されました。一方、各大学が独自にこれらの英語検定試験を入試で利用することはできます。ですから、前述のような英語4技能を測る検定を持っている場合は、入試での選択肢は増えます。

保護者が気を付けるべきことはありますか?

大学進学に際しては、社会情勢、家計状況など、学力以外にも多くの要因を含め志望大学・学部を決めることになります。一方、保護者の意向に左右される受験生の話も多く聞きます。極端な例ですが、受験生本人は、本当は文学部に行きたかったけれど、親に言われて資格が取れる福祉系の学部に進んだ、など。

大学で学ぶのも、知己を得るのもお子さん本人です。本人が学びたい学問を、学びたい大学で学ぶ、これが理想です。親御さんは経済的支援や、多くの選択肢を前に悩むお子さんから相談があればアドバイスするなどサポートに徹し、お子さんには自分の意思で判断して志望大学・学部を決めてほしいと思います。

 


日本の大学トレンド 2019

教育コンサルタントの原田誠さんに、最新の日本の大学の動向や、日本の大学選びのポイントについて話を伺いました。

原田誠さん原田誠さん
教育コンサルタント。MACS Career&Education代表。本誌で人気コラム「米国大学進学ガイダンス」を連載中。サンフランシスコ・ベイエリアを拠点に、中高生の進学指導などを行う。
Web:macscareer.com

最近の日本人の傾向、動向は?

私は仕事柄、日本にいる高校の先生や高校生の保護者と話をする機会も多いのですが、ここ2、3年で海外進学を推進する高校や、そういったことに興味のある保護者の間で「グローバルに大学を選ぶ」という視点が浸透し始めているようです。アメリカにとどまらず、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアの大学にも目が向いています。

それと比べるとアメリカ在住の日本人は、「帰国生は損か得か」とか、「日米で1単位あたりの価格はどうか?」とか、大学の学びの本質と違うところを気にされる人が多いようです。単に「日米を比較」とか、「日米どちらが優れているか?」よりも、まずは「何のために大学教育を受けるのか?」を考え、その上で進学先を選ぶことが大事です。

また、日本で教育を受けてアメリカに住む保護者の多くは、90年代や2000年代初頭くらいで大学情報が止まっていて、日本の大学の進化がキャッチアップできていません。親世代の大学のネームバリューと偏差値はこれから役に立たなくなるので、それも気を付けたいところです。

日本の大学のトレンドは?

日本政府の提唱する言葉に「ソサエティ5.0」というものがあります。要は、今までと全く違う時代がやってくるということで、そういう時代に大事なのは、世の中が変わっても生きていける力を身に付けること。今、日本では、それを身に付けるようにするための教育改革が始まっています。

文科省の号令を待たずに改革を始めている大学もあります。これから日本の大学は素晴らしいプログラムがたくさん生まれ、そういう大学は海外で評価が高まるでしょう。

教育改革の1つに入試制度改革があります。背景には、従来の入試問題が大学の学びと直接リンクしなかったことへの反省と、アメリカのように大学で学ぶ能力を入試で見たいという大学の変化があります。この改革はまだ2、3年続くと思われます。つまり、その間は入試制度が毎年変化していき、従来の入試情報はあまり参考にならなくなるかもしれないということです。

また、日本の高校でIB(国際バカロレア)やAP(アドバンスト・プレイスメント)を取り入れる動きもあります。今、アメリカの高校でIBやAPを取っても、日本の大学ではアメリカの大学のように単位認定されないのが現状です。しかし、日本の大学、特に留学生が多い大学はその現状を理解しているので、近い将来、IBやAPを単位認定する大学が出てくると思われます。

そして、日本の大学がここ数年、力を入れているのがリベラルアーツです。アメリカの方が歴史はありますが、幅広い教養を身に付けた人が社会で活躍できるというリベラルアーツの発想を取り入れ、取り組む大学が増えてきているので、この分野の学習も日本の大学選びのポイントになると思います。

日本の大学は転換期を迎え、この変化に付いていける大学とそうでない大学が出てくるでしょう。今まで有名だった大学と今後伸びる大学は違うかもしれません。

大学、学部の選び方のポイント

日本の大学選びのポイントの1つは、海外から来る学生を育てるためにどんな教育やプランを持っているかです。大学の入試課などに直接聞き、海外学生への考え方についてきちんと答えられる大学を選ぶことです。日本の大学は、海外からの学生に「日本の学生に刺激を与えてほしい」と期待していますが、実は留学生をきちんと育てるプランを持ってる大学は少なかったりします。

学部レベルで学べる内容は、どこの国でもそんなに大差ないかもしれません。今は、その気になれば、それなりのレベルの学習はどこでもできる時代ですから。だからこそ、大学選びは学部の勉強プラス付加価値が重要で、「将来は日本で働きたい」、「日本で生活してみたい」、「日本語をもっと話せるようになりたい」、「日本文化を知りたい」、そういう発想で大学を選ぶのは、とても良いことだと思います。特にアメリカで育った日本人の子どもにとって、アイデンティティーの確立は大きな問題です。

また、日本に限らずアメリカ以外、どこの国でも学部を決めてから進学するのが基本です。なので、将来やりたいことや学びたい分野が明確な人には日本やヨーロッパの大学が向いてるでしょう。ヨーロッパは3年制なので、方向性をかなり明確に絞らなければなりません。日本は4年間あるので、そこまで細分化しない選び方も可能です。入学時点で学部だけ決め、細かい専攻は入ってから選ぶことも多いのでフレキシビリティーがあります。

もう1つ考えたいのが、大学院への進学です。今、日本の大学院は諸外国と比べると規模が小さい上、人材育成基盤も弱いのが現状です。これは文科省も認めている事実で、今後強化していくところです。ただ、すぐに強化できるわけではないので、大学は日本、大学院は日本国外というパターンも考えられるでしょう。大学院進学を見据えたとき、「大学の学部ではどういった学習がいいのか?」、「日本の大学院に進んだとしても日本語で学ぶのと英語で学のはどちらがいいのか?」、「日英ハイブリットがいいのか?」、こういったことも考えたいところです。

今、日本の大学院進学率はアメリカの4分の1以下とかなり低いですが、グローバル化が進めば、文系理系問わず大学院レベルの教育が一層重要になり、大学院進学率も上がる、そういう時代が来るでしょう。

これから伸びていく大学、自分に合いそうな大学を探すには大学に直接問い合せる、訪問するといった地道な比較検討が大事です。基本は大学一つ一つを当たっていくことだと思います。

アメリカの大学の最近の動向は?

最近、アメリカの大学でもグローバル化、つまり大学生のうちに他国に出て学んだり、他言語を学んだりすることに力を入れています。特にここ10年くらいは積極的に学生を海外に出そうとしていて、在学中に海外留学しなければ卒業させないという大学もあります。これからアメリカで生きていくとしても、アメリカだけ知っていればいいというわけではありません。実際、経済の中心はアジアに移りつつありますし、ヨーロッパの大学に交換留学に行って「アメリカが世界の中心でないことに気付いた」と言って帰ってくるアメリカ人の大学生も大勢います。

これからの時代は、アメリカの大学に進学したとしても、日本の大学の長期短期留学や、日本に限らずアジアに出て複数の国で学ぶことを選択肢に入れてもいいかもしれません。

※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版2020年4月1日号」「ライトハウス・ロサンゼルス版2019年4月1日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。