10のキーワードで紐解く日本の大学

日本の大学を、10のキーワードで解説。自分に一番合った大学選びのヒントに!


Keyword1 入学・アドミッション

在米のライトハウス読者の皆さんが日本の大学入学を目指す場合、大きく分けて「留学生」「帰国生」の2つの枠で入学するのがメジャーです。前者は日本国籍を持たない人、後者は日本国籍を持つ人を対象とするのが一般的です。それ以外にも、一般入試や推薦入試、AO入試などでの受験が可能なケースもあります。

日本の大学は年々、留学生、帰国生を受け入れる体制を整えており、進学しやすい環境になってきています。アメリカの学校学期に合わせた秋入学、英語のみで完結する、またアメリカ国内で受験が完結するアドミッションの制度など、海外からの入学生に門戸が広く開かれています。代表的な日本の大学の制度は、このウェブサイトの各大学のページにまとめていますので、こちらも見てみてください。

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Keyword2 専門的で多様な学部・学科

日本の大学では、入学時点で学部や学科を選ぶのが一般的で、既に自分の将来の目標や勉強したいことが決まっている人には適しています。ユニークな学部も数多くあるので、いくつか例を挙げてみましょう。

筑波大学には、国立の総合大学としては珍しく、体育専門学群、芸術専門学群があり、スポーツ、芸術の学問分野を体系的に学ぶことができます。

桜美林大学にはフライトオペレーション(パイロット養成)コースがあり、学部の時点からパイロットになるための授業・訓練を受けることが可能です。4年間のうちにアメリカでの飛行訓練も行い、卒業生のほとんどが副操縦士訓練生として航空会社に就職します。

また、2020年に新しく開学した開志専門職大学にはアニメ・マンガ学部があり、プロの講師から最新の技術やトレンドを学ぶことができます。

Keyword3 日本のリベラルアーツ教育

ユニークな学部もある一方で、リベラルアーツ系の学部も充実してきています。例えば国際基督教大学(ICU)は、日英バイリンガルでリベラルアーツ教育を実践する、日本を代表するリベラルアーツ大学。31の専修分野から幅広く学び、2年次終了時にメジャーを決定。専門を深く、多角的に学ぶことが可能です。

また、上智大学の国際教養学部、中京大学国際学部のGLS(Global Liberal Studies)専攻などは、リベラルアーツ教育を全て英語で提供しています。日本にいながら、アメリカの大学に近いリベラルアーツ教育を受けられるので、スムーズに学習を進めていけるでしょう。

Keyword4 学費

日本の大学は「国立」「公立」「私立」の3つに大きく分かれています。国立大学には学費の標準額が定められており(下の表の通り)、ほとんどの国立大学がこれに準じ、公立大学も多くがこれを基準としています。一方、私立大学は、各大学・学部・学科によって異なります。年間授業料は、例えば文系で約75〜80万円、理系で約100万円、医学部でも300万円前後です(いずれも、これ以外に入学金、施設費などがかかる場合もあります)。

州立大学州内枠で年間約2万ドル、私立大で5万ドル以上(いずれも全米平均)というアメリカの大学に比べれば、低水準ということが分かります。

国立大学の学費標準額(2021年)

入学金 授業料
28万2000円 53万5800円
Keyword5 奨学金

学費に加えて、リサーチが必要なのが奨学金です。費用を考える際には、学費に加えて日本での滞在コスト、そして用意されている奨学金までトータルで見て、全体の費用を捉えましょう。

まず、大学によっては、留学生向けの特別な奨学金を用意しているケースもあります。学費の免除や生活費の補助などの内容も、成績や経済面など、給付の条件もさまざまです。入学前に申請でき、給付が決まるタイプの奨学金もあります。

それ以外に、国の制度として「国費留学制度」や、JASSO(日本学生支援機構)が提供する「留学生受入れ促進プログラム予約制度」などの公的奨学金の制度があります。JASSOのウェブサイト(www.jasso.go.jp)などから、自分に条件の合う公的奨学金の制度があるか確認してみてください。

Keyword6 都市型キャンパス・郊外型キャンパス

キャンパスは、都市型・郊外型の2種類に大きく分類されます。都市型は、比較的キャンパスは小規模なものの、都市部にあるがゆえに周辺へのアクセスが良く、キャンパス外でも積極的に活動をしたいという学生には適しています。例えば東京なら、青山学院大学上智大学などが都心部にキャンパスを構えています。また関西の例を挙げると、立命館大学の衣笠キャンパスは京都の中心にあり、日本の歴史を感じながら学べるユニークな立地です。

一方の郊外型は広大なキャンパスが特長で、関連施設もキャンパス内に集まっているため、落ち着いて学問に取り組むのに適した環境。次の項目で紹介する学生寮も、郊外型の場合はキャンパス内や近辺に多く配置されています。多くのアメリカの大学に近いのはこの郊外型キャンパスと言えます。個々の希望・スタイルに合ったキャンパスを見つけてください。

Keyword7 住まい・学生寮

どこに住むのか、ということも、気になる点の一つ。特に学生が一人で日本に暮らす場合、大学が運営に関わっている寮があれば安心ですし、家賃も安価なケースが多いです。また、最近では留学生と日本国内からの入学生の交流を促進する「国際寮」も増えています。

例えば「筑波研究学園都市」としても知られる茨城県つくば市の筑波大学は、キャンパス内に約3700室の学生寮(学生宿舎)があり、留学生と日本人学生が一緒に住むシェアハウス型の学生宿舎「グローバルヴィレッジ」(定員500名)も用意されています。大分県にある立命館アジア太平洋大学(APU)には、約1300名の学生が住む国際学生寮「APハウス」があります。先輩学生であるレジデント・アシスタントが各フロアに2名おり、何かあった際はすぐに相談ができる環境を整えています。

もちろん学生によっては、寮ではなく一人暮らしに向いている場合もありますから、個々の性格に合わせて選びましょう。

Keyword8 海外大学提携・留学

多くの大学は、日本国外の大学との協定を結んでいます。短期・中期の留学プログラムはもちろん、日本の大学と留学先の大学、2つの学位が取得できるダブルディグリー制度などもあります。

例えば桜美林大学には、同大学で2年半学んだ後、サンフランシスコ州立大学で学び卒業し、その後、桜美林大学を卒業すれば、両大学の卒業が認められるというプログラムがあります。

また、立命館大学では、オーストラリア国立大学と提携し、両大学が相互に単位認定を行っています。2つの大学で学び、両大学の学位を取得することができます。

大学のプログラムでの留学費用は、日本の大学への学費、留学先での学費どちらかを払えば良いケースなどが一般的。上手に利用すれば、時間もお金もうまくセーブしながら2つ以上の大学で学ぶことが可能です。

Keyword9 学生フォロー・サポート

日本での新しい暮らしに慣れるために、大学はいろいろなサポートを提供しています。ここでは、桜美林大学の宮﨑さんに、学生をサポートする同大学の制度を紹介いただきました。

「海外からの留学生にとって、来日直後は最も不安な時期です。留学生が日本での暮らしや大学生活に早く慣れるようにサポートするのがバディプログラムです。具体的には来日から授業開始前の約2週間の期間に住民登録や履修登録のサポート、キャンパスツアー、町田周辺のツアーなどを通して留学生をサポートします。オリエンテーション最終日にはウェルカムパーティーを行い、留学生をもてなします。ウェルカムパーティーは、企画準備から当日運営まで全てバディプログラムの学生メンバーだけで行い、夏祭りをテーマにするなど日本文化を体感してもらう工夫をして取り組んでいます」。

Keyword10 卒業後の進路

大学を卒業した後の進路も、大学を選ぶ際にある程度考慮しておきたいもの。海外生に対して、大学はどのように進路サポートをしているのか、多くの国際学生を受け入れている立命館アジア太平洋大学(APU)の杉山さんに聞きました。

「本学では、外国籍の学生の就職をサポートするために1年次から『キャリア・ガイダンス』を実施しています。さらに2年次には『インターンシップガイダンス』、3年次では『就職活動キックオフガイダンス』や『自己PR発見ワークショップ』などを実施し、学生を支援しています。また大学院進学を目指す学生に対しては『大学院進学セミナー』や『大学院入試説明会』などを実施しています。外国籍の学生の進路は多岐にわたり、日本の企業に就職をする学生もいれば、自国に帰る学生もいます。また近年では海外の大学院に進学を希望する学生も増えてきています」。

大学の卒業生の進路状況などから、自分の将来を想像し、そこから逆算して大学を選ぶ、というのも一つの方法です。


※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版2021年4月1日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。